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膝の打撲と挫傷

 

  このページの目次

 

 膝 は、打撲や挫傷を生じやすい部位といえます。特に小児や老人は転倒により膝を打ち、打撲や擦り傷などをよく起します。また、スポーツの練習などで膝をついたり、擦ったりすることが多いと 、炎症を起すことも有ります。この膝の打撲や挫傷では、 皮下組織の単純打撲や挫傷による軽度の炎症程度のものから、その程度によっては、膝蓋骨骨折や顆間隆起骨折のような膝関節内の骨折、その他にも膝蓋前滑液包炎、ジャンパー膝、膝蓋腱断裂、大腿四頭筋腱 損傷などを生ずることも有ります。その他に皮膚や皮下組織の損傷により、膝蓋部の裂傷、擦過傷による細菌感染なども多く見られます。その多くは、前述のように事故やスポーツ中に生じた打撲や急激な物理的ストレスによるもので起こりますが、中には基礎疾患が潜んでいて、僅かな負荷を引き金に徐々に損壊するケースもあります。このページでは 骨折を除き、膝の打撲や挫傷により起こる、各傷病ごとの発生や病態、診察を受けるべき医療機関や予後などについて解説します。

 


  膝の打撲
  膝蓋前滑液包炎
  ジャンパー膝
  膝蓋腱断裂
  大腿四頭筋腱断裂

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1. 膝の打撲
 歩行中の転倒やスポーツ中の打撃、事故などによる衝突など、膝は比較的打撲を受けやすい部分です。この膝の打撲の場合、膝蓋(しつがい)部や脛骨粗面 (けいこつそめん)部、あるいは膝の内顆(ないか)や外顆(がいか)など、骨が隆起している部分に損傷を受けやすいため、多くはそれら骨隆起部分の皮下組織を損傷します。

(1) 症状
 打撲部に限局した圧痛、腫脹、皮下出血がみられ、時間経過と共に腫脹と皮下出血がびまん性に広がります。打撲直後は膝関節運動が疼痛により困難になることもありますが、すぐに関節運動は可能になります。関節運動に制限があったり、関節運動時に動揺する徴候がある場合は靱帯損傷や軟骨損傷が疑われます。また、膝関節の形状が変形している場合は骨折の疑いがあります。
 打撲時に、膝頭や脛骨粗面などの骨隆起部分辺りに、擦過傷や裂傷などの創傷を生じる場合も多く、特に裂傷では、関節部分のために大きく傷口が開いて、皮下組織が露出するほどの損傷も起こります。

(2) 治療
 ここでは、単純な皮下組織の損傷に留まる打撲について記載します。
 腫脹が軽度なものは冷湿布程度で充分です。多少の腫れや皮下出血が目立っているものでも、伸縮包帯で軽く圧迫固定を加えれば10日ぐらいで治ります。創傷があるものでは消毒と、滅菌ガーゼなど による創面の被覆も必要です。また、裂傷を伴う場合や傷口が化膿したり細菌感染の疑いがある場合は、外科医の診察を要します。
 尚、高齢者で膝関節の変形性関節症を罹患している場合や、糖尿病、リウマチなどの疾患を有する場合は、打撲をきっかけに膝関節の強い腫れや屈伸障害を起こすことがあります。この様なケースでは、整形外科による関節穿刺やレントゲン検査を受ける必要があります。この様な場合は、リハビリを要するなど長期の加療が必要となります。

  左ひざ関節正面画像
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2. 膝蓋前滑液包炎(しつがいぜんかつえきほうえん)
 膝蓋骨の前面を覆う組織には、表層より皮下組織、大腿筋膜、大腿四頭筋腱線維があり、膝蓋骨を含む各層の間には、組織間の摩擦を軽減するための、滑液包 (かつえきほう)という滑液を含んだ袋状の組織があります。膝蓋前滑液包炎は、この滑液包が膝蓋部の挫傷により炎症を生じた状態をいいます。

(1) 原因
 転倒や打撃などによる膝の打撲で起こるものの他、膝をつく動作が多いスポーツや労働で起こるものなどが見られます。また、下肢の麻痺などで膝関節を床につけて歩行する人にも見られます。

(2) 症状
 膝蓋部に、やや半球状に膨隆した腫脹が特徴で、液状物質貯留による波動を触知します。打撲等の外傷により起こった場合は、圧痛と皮下出血が著明となりますが、膝をつく動作の繰り返しで徐々に起こった場合は、皮下出血や圧痛もほとんど無く、有っても極めて軽度です。時に挫滅した皮膚からの細菌感染(主に黄色ブドウ球菌による)を生じることがあり、その場合は、化膿性炎症を生じて、発赤や熱感、全身的発熱、著明な疼痛が見られます。
 判定は、整形外科にて注射器による穿刺を行います。通常は、急性外傷性の場合は血液性、慢性炎症性の場合は漿液性(しょうえきせい)、細菌感染による化膿性の場合は膿性の穿刺液を確認することができます。

  膝関節前方滑液包の略図
 

(3) 治療
 治療は軽度の場合、接骨院でも挫傷として施行できます。ただし、腫脹が顕著なものや感染性の疑いがある場合は、整形外科の診察を要します。
 外傷性の場合、腫脹が軽度であれば放置しても自然治癒が期待できます。やや腫れが大きい場合は弾力包帯などで圧迫固定をします。慢性炎症の場合は整形外科による治療が必要で す。
 整形外科では、穿刺して排液を施行した後に圧迫固定を行いますが、改善されない場合は滑液包の除去手術を行う場合があります。また化膿性炎症では、抗生剤の投与などが行われます。
 治療の結果、貯留した液状物質が消失し、波動を触知しなくなっても、皮膚の硬結が存在するうちは、膝を床についたり、スポーツなどで接触するような動作は、再発を繰り返す原因となるため禁忌です。

 

 膝をつく動作で起こる滑液包炎は、膝蓋前滑液包炎だけではなく、上図にあるその他の滑液包でも起こることがあります。膝蓋下滑液包炎では、膝蓋腱部分に腫脹が起こる膝蓋下皮下包炎 (しつがいかひかほうえん)と、膝蓋腱の両側に腫脹が起こる深膝蓋下包炎(しんしつがいかほうえん)があります。またその末梢の脛骨粗面部分に腫脹が起こる脛骨粗面皮下包炎 (けいこつそめんひかほうえん)では、成長期の場合、オスグッド病との鑑別を要します。


 

3. ジャンパー膝(膝蓋腱炎 と大腿四頭筋腱炎)
 ジャンパー膝は、膝伸展機構に起こるスポーツ障害で、主にバレーボールやバスケットボールなどジャンプを繰り返すスポーツで多くみられます。 膝伸展機構とは、大腿部の前面に位置する大腿四頭筋、膝蓋骨、及び膝蓋腱(解剖学的には膝蓋靱帯ともいいます)による連携運動機構のことです。すなわち膝伸展の際、大腿四頭筋が収縮し、膝蓋骨は大腿四頭筋の収縮により大腿部の近位に向かって滑走し、膝蓋腱はそれらの牽引力により緊張します。また、膝屈曲の際には、屈曲スピードに合わせて大腿四頭筋が緊張を保ちながら徐々に収縮を緩めて、スムーズな屈曲が成されるように介助します。これら一連の運動が繰り返し反復されるうちに、膝蓋腱や大腿四頭筋腱に疲労性の炎症や微細断裂を生じたものをジャンパー膝といいます。

(1) 原因と病態 ・症状
 上記の通り、スポーツなどにより、ジャンプや着地の繰り返し、あるいはランニングの急加速や急減速の繰り返しや、急坂や階段の登坂の反復練習などで起こります。
 大腿四頭筋腱炎(だいたいしとうきんけんえん)では、膝蓋骨上部の腱付着部で炎症や腱組織の微細断裂が起こり、膝蓋腱炎(しつがいけんえん)では、膝蓋骨下部の腱付着部で炎症や腱組織の微細断裂が起こります。またX線検査にて、腱付着部に石灰化や骨化現象が見られるものもあります。
 微細断裂を起こした腱線維は変性を生じ、やがて修復反応(線維芽細胞による線維の新生と血管新生など)が現れます。慢性化するとこの腱線維の変性と修復反応が混在すると云われています。
 圧痛点は、大腿四頭筋腱炎では膝蓋骨上端の腱付着部に、膝蓋腱炎では膝蓋骨下端の腱付着部にそれぞれ触知します。また、どちらの場合でも大腿四頭筋の硬直や柔軟性の低下(尻上がり現象やスクワットテスト陽性など)が見られます。
 疼痛は屈伸動作時に誘発されることが多く、その際に膝のひっかかり感やこわばりを訴えることもあります。
 腫脹は患部を中心に軽度のびまん性として出現する場合がありますが、ほとんど無いこともあります。
 発症初期は、運動中に痛みが消失することもありますが、炎症が進行すると運動中の痛みが顕著になり、膝崩れ現象がみられます。

  膝の伸展、屈曲時の断面図

ジャンパー膝の損傷部位を示す略図

 

ジャンパー膝の圧痛点画像
ジャンパー膝の圧痛点
膝蓋骨上端と下端の腱・靱帯付着部
は大腿四頭筋腱、は膝蓋靭帯の付着部)

ジャンパー膝の触診1 ジャンパー膝の触診2
 
     

(2) 治療と予後
 原則として患部の安静、運動後の患部のアイシング 、運動中のテーピングやサポーター固定などが施行されます。また、大腿四頭筋やハムストリング(大腿後方の筋肉群)の筋力トレーニングやストレッチングを指導します。
 整形外科では、消炎鎮痛剤が処方され、経過観察が行われます。また、慢性的なもので症状が重い場合、スポーツの継続を希望する患者に限り、手術的に処置を行う場合もあります。手術は、変性した腱線維を切除した上で、修復反応を刺激する ため、膝蓋骨の病変部に穿孔手術などを行うようです。
 予後は、ジャンパー膝の原因となった動作(練習方法など)を中断し、運動方法を変えるなどをした上で患部のメンテナンスを行えば良好です。症状が悪化したり、慢性化するケースでは、下肢アライメント(O脚や外反足など)の異常、あるいは膝蓋大腿関節の形状異常や変形など根本的原因が存在が考えられます。このようなケースでは、それら形態異常を改善する必要があります。

  ジャンパー膝の症状・尻上がり現象

 

4.膝蓋腱断裂
 膝蓋腱断裂は、膝蓋腱を打撲で強打したときや、膝蓋腱に急激な牽引力が働いて起こります。
 この損傷は、純粋な外傷により起こることは少なく、膝蓋腱の耐久力が脆弱になるような基礎疾患が関連しているケースが多いようです。

(1) 原因
 外傷性の場合は、交通事故や階段での転倒など、膝蓋腱を直接強打するような直達性外力により起こります。一方、スポーツなどによる自家筋力の強力な牽引で起こる介達性損傷は比較的まれです。また、基礎疾患として、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、慢性腎不全による長期間の透析などがある場合、あるいはステロイドの局所注射 の繰りかえしなど、何らかの要因で膝蓋腱が変性している場合は、膝蓋腱の耐久力が低下して非常に脆弱なため、わずかな外力、あるいはほとんど外力無しで断裂を生じることもあります。

(2) 病態と症状
 外傷性では、断裂部分に圧痛、腫脹、皮下出血、膝蓋下部の陥凹が見られ、膝蓋骨は健側よりも高位(上方)に偏位します。また、歩行は困難となり、膝関節の伸展は他動的には可能ですが、自動運動では困難もしくは全く不能となります。
 病的因子により徐々に断裂したもの、あるいは靱帯の変性が先行し僅かな外力で断裂を生じたもの、もしくは断裂してから日数が経過して放置されていた陳旧性の場合では、腫脹は軽度で皮下出血もほとんど見られません。また、膝蓋下部に陥凹が有り、歩行動作は患側を振り出すような振り出し歩行が見られます。

(3) 治療
 治療は整形外科により行われます。外傷性の場合は、断裂部分の縫合手術となります。病的因子を有し、腱の変性が存在する場合や、断裂してから放置されて陳旧性となったものでは、縫合術に加えて腱補強術を施行、もしくは腱再建術が施行されます。
 

  膝蓋腱断裂のイメージ
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5. 大腿四頭筋腱損傷
 膝蓋骨に接続する大腿四頭筋腱の損傷は、直接打撃を受けた場合を除き、中年以降のスポーツ外傷として見られることがあるもので、若年者の場合は、それよりも上位の筋肉部分の断裂となります。
 本来、筋肉部分よりも腱の方が強力で耐久力があるため、急激で大きな負荷や外力が加わると、通常は筋断裂を生ずるのですが、中年以降では、腱の耐久力低下や変性が起こるために、腱断裂が発生しやすくなります。また、上記膝蓋腱断裂と同様に、基礎疾患として、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、慢性腎不全による長期間の透析などがある場合、年齢に関係なく 大腿四頭筋腱の変性を生じ、耐久力が低下して非常に脆弱なため、わずかな外力で断裂を生じることもあります。

(1) 原因と病態
 外傷性の場合は、スポーツ中の急激な大腿四頭筋の収縮、交通事故や労働災害などによる大腿四頭筋腱への打撲などで起こります。
 打撲を原因とする場合は、打撲を受けた部分に大腿四頭筋腱の挫滅や部分断裂を生じます。また、打撲部分の皮下組織損傷を伴い、皮下出血が起こります。一方、急激な大腿四頭筋の収縮により損傷した場合は、大腿四頭筋腱の部分断裂、もしくは腱と筋肉の境界部付近での筋線維の損傷(いわゆる肉離れ)を生じ、皮下組織の損傷は伴いません。また、発症原因がどちらであっても、その外力が強大な場合、あるいは腱の変性が存在する場合は完全断裂を生ずる確率が高くなります。

(2) 症状
 純粋な外傷の場合、大腿四頭筋腱損傷部の圧痛、皮下出血がみられ、また断裂の場合は断端の膨隆や断裂部の陥凹、膝関節の自動伸展障害などの症状が見られます。変性した腱の断裂では、圧痛が弱く、皮下出血が出現しない例もありますが、断裂部の陥凹や断端の膨隆は観察されます。尚、中間広筋の部分断裂のみの場合は、症状が不明瞭で日常動作にもあまり支障がないため見過ごされることもあります。
 X線検査では、断裂があった場合に、膝蓋骨が正常よりも低位(下方偏位)に観察されます。また、MRIでは損傷状態を明瞭に観察することができます。

(3) 治療
 機能障害を残すほどの損傷でなければ、包帯固定やサポーター固定などで経過を観察します。しかし機能障害を残すほどの断裂がある場合は、整形外科の手術による処置を要します。
 手術は断裂部分の縫合術となりますが、腱の変性などで充分な縫合結果が得られない場合は、腱補強術を施行、もしくは腱再建術を施行することになります。

  大腿四頭筋略図1大腿四頭筋略図2
大腿四頭筋略図(大まかな位置を示す)
左図の3つの筋の上に右図の大腿直筋が重なる
大腿四頭筋はこの4つの筋肉から構成される

大腿四頭筋腱断裂略図

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Copyright © 2012 秋元接骨院 秋元 英俊 最終更新日2016年9月21日
 

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