子どもの鎖骨骨折
鎖骨の若木屈曲骨折(さこつのわかぎくっきょくこっせつ)
転倒などにより肩を突いた際に、鎖骨を骨折することがあります。乳幼児期などでも比較的頻度の高い骨折といえます。乳幼児における鎖骨骨折では、若木屈曲骨折ともいわれ、骨折した際、完全に鎖骨が離断するわけではなく、みずみずしい若木がぐにゃっと折れ曲がるような感じの骨折形態をとります。
乳幼児鎖骨骨折の原因
高所よりの転落や歩行時の転倒などで肩や肘などを強打した場合にその外力を同側の鎖骨で受け止め、鎖骨が長軸方向に強く圧迫されて折れ曲がるように損傷します。
乳幼児鎖骨骨折の症状
鎖骨中央辺り(中1/3)に上方へ突出した変形と限局性圧痛を触知します。また脇の下から手を差し入れて抱き上げると骨折部が刺激されて痛むため、泣いて痛みを訴えたりします。
鎖骨の屈曲変形が強い場合、上方へ突出した鎖骨の変形が視認され、患側の肩幅が健側の肩幅よりも明らかに狭くなったように見えます。また、患側の肩関節が健側の肩
関節よりも下がった位置に偏位して見えることもあります。
2歳以上の幼児では痛みを和らげるために患側の腕を健側の手で支え、首を患側に傾ける姿勢をとることがあります。
X線検査では、鎖骨の中1/3の辺りで突出した屈曲変形が確認されますが、乳児の場合は成長過程のため軟骨部分が多く、レントゲン写真で明確な画像を得ることが困難な場合は触診や視診にて診断を確定します。
尚、屈曲変形があまり起こらない程度の骨折では、外見からは判断できない上、レントゲン写真でも判別不能となることがあります。その場合は、主に鎖骨に限局した圧痛の有無で判断することになります。
乳幼児期鎖骨骨折の治療と予後
固定することが主な治療となります。固定期間は約3週間ぐらいで、包帯や専用のベルトなどで両肩をたすき状に固定し、胸を開いて両肩を後ろに引くような姿勢を保持します。
固定除去後は特にリハビリなどの必要はありません。大人と違って関節が硬くなるなどの拘縮もほとんど起こらず自然に日常通りの動きに回復します。また、変形したまま骨折部分が修復されても、成長とともに自然矯正
(再構築)され、変形などの後遺症を残さないことがほとんどです。とても予後は良好な骨折といえます。
※ 鎖骨の自家矯正(自然矯正)効果
成長期の子どもは、骨折による変形を生じても、元の形状に戻る力を備えています。
骨折した骨は、折れた部分を再構築しようとして仮骨(かこつ)という軟骨により骨折部分を被います。この仮骨はやがて正常な骨に変化(骨化という)していきます。そうして折れた形のまま骨折した部分は癒合(ゆごう:骨がしっかりくっついた状態)するわけですが、骨はその後も周囲から受ける刺激の強弱によって吸収と新生を繰り返しています。骨には筋肉や靱帯が付着し、その張力で刺激を受けています。また周囲組織の重量による負荷や運動による衝撃や圧力も受けています。この刺激のある部位は骨の構築が盛んになり、刺激の無い部位は吸収されてしまいます。骨折部分もこのような刺激の働きにより、再構築が行われて元の形に戻ろうとします。
子どもは非常に旺盛な再生能力を有し、おどろくべき速さでこのような鎖骨の再構築が起こり、何事も無かったように回復してしまいます。
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