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いわゆる野球肩は成長期でも成人でも起こりますが、その痛みの本態は別のものとなります。だいたい15歳未満の成長期では、上腕骨上端部の成長軟骨に障害が起こり、肩の痛みを発生します。一方で15歳以上の成人の骨格に近くなった場合では、肩関節の周囲を補強する靱帯や筋肉、腱などの障害により痛みが発生します。従って、成長期に起こる野球肩をリトルリーガーズショルダーといい、10代後半以降のベースボールショルダーとは分けて扱われます。
成長期の野球肩は、上記の通り、上腕骨上端部の成長軟骨に起こる骨端症(こったんしょう)もしくは成長軟骨の骨端線離開(上腕骨上端部骨端線離開)です。
※ 上腕骨の骨端症と骨端線離開の違い
レントゲンなどの検査で、明確な成長軟骨の損傷がみられない場合は、骨端症もしくは骨端炎と診断されます。一方、成長軟骨やその隣接する骨に損傷がみられ、いわゆるひびや骨折状態であれば、完全な離断が無くても骨端線離開と診断されます。
単純な骨端症(骨端炎)でも、実際には成長軟骨の細かな「ひび」などの微細損壊が存在する場合が多く、その状態で新たに強い外力を受けると骨折や離開を起こす確立が高くなります。従って、骨端症を生じたら、炎症が治まるまで安静にすることが大切です。無理をして悪化させると結果的に復帰時期が大幅に遅れることとなります。
野球などによる投球動作で、上腕骨にかかる捻りのストレスと、投げ込むときに起こる上肢末梢方向への遠心力が主な原因となります。
投球をする際、上腕を後方に引きながら外旋という捻りの動作を行っています。さらに投げ込むときに、上腕は最大外旋位から一気に内旋という捻りをしながら前方に振り下ろしていきます。この上腕の内旋、外旋という回旋動作と、腕を振り下ろす際に起こる遠心力で上肢を末梢方向への引っ張る力、さらにその動作を行う際に働く筋肉の張力による負荷が、上腕上端部の骨端線(成長軟骨)部分に作用します。
骨端線は、骨本体よりも耐久力が弱いため、耐久力の限度を超える投球動作を繰り返すことにより疲労性のストレスが蓄積され徐々に損壊していきます。
※ 上腕の回旋運動
上腕の回旋運動は、上腕の正面を基準に外へ捻る動作を外旋(がいせん)、内へ捻る動作を内旋といいます。例えば、肘を直角に屈曲して上腕二頭筋(いわゆるちからこぶの出る筋肉)を正面にした場合、そこから上腕二頭筋のある正面を外へ向けるように捻ると外旋になり、逆に内へ向けるように捻ると内旋となります。
投球動作時の疼痛
初めは、この投球動作時だけの痛みであることが多いようです。その他の日常動作ではほとんど痛みがでないのですが、損傷が進行していくと日常の動作でも痛みを訴えるようになります。
痛みの範囲は、肩関節を中心に肩甲骨や鎖骨周囲、上腕外側に見られ、前腕橈側にいたる場合もあります。
上腕の他動的回旋運動で疼痛を誘発
上腕の内旋、外旋運動を他動的に強制すると強い痛みを訴えます。この症状は初期は不明瞭なこともありますが、進行すると明確な疼痛誘発を再現できます。
骨端線(成長軟骨)に一致した限局性圧痛
上腕上端部の成長軟骨に沿って圧痛(患部を手指で圧迫することで誘発する疼痛)を触知できます。この圧痛の範囲が成長軟骨に一致しない範囲まで広がっている場合は、肩関節周囲の筋膜炎や滑膜炎が疑われます。
肩関節周囲筋肉の萎縮
発症初期は見られませんが、症状が進行すると共に周囲筋肉の萎縮を起こす場合があります。
萎縮を起こす筋肉は、三角筋、大胸筋、小胸筋、棘上筋、棘下筋、僧帽筋などのうち、いずれか複数もしくは全てに 見られることがあります。
X線像
レントゲン写真では判断しにくい場合もありますが、明らかな仮骨形成(骨・軟骨の損傷部分に起こる修復反応)や転位のある骨端線離開が観察される場合もあり、経過観察を含めて重要な観察方法となります。
安静が基本となります。従って、投球動作の禁止を指示し、三角巾による固定を行います。また、転位のある骨端線離開では、整形外科による整復処置とギプス固定などを行う場合もあります。
固定後約3週経過したら自動運動による運動療法を開始します。
骨端線の修復が完成されるのに要する期間は、その損傷の程度により3ヶ月から6ヶ月といわれています。整形外科によるレントゲンなどの画像検査機を用いた経過観察により判定されます。
骨端線の修復反応が概ね良好な状態となったらキャッチボールが許可されますが、完全復帰までは早くても6ヶ月、場合によっては1年以上要することもあります。
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