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脛骨粗面(けいこつそめん)の骨端軟骨に起こる裂離(れつり)骨折です。従って、脛骨粗面の骨端線が閉鎖する直前の中学生ぐらいに多くみられます。
尚、本症は外傷による急性損傷で、疲労性・慢性的に起こる骨端症の一種と考えられているオスグッド病とは区別します。オスグッド病についてはこちらのページをご覧ください。
脛骨粗面(けいこつそめん)とは、脛骨の近位で前方に突出した結節と呼ばれる骨が隆起した部分のことで、ここに膝蓋腱(しつがいけん:膝蓋靭帯ともいう)が付着するために、その表面がザラザラした粗い表面をしていることで粗面と呼ばれています。
成長期の骨は、成長軟骨と呼ばれる軟骨層が有り、その部分で骨の長径成長が成されています。
脛骨の様に長管骨(管状に長い骨)では、骨端(こったん)と呼ばれる骨の近位・遠位の両端部分に、その成長軟骨が形成され、それを骨端軟骨(こったんなんこつ)と呼んでいます。
脛骨の近位端の成長軟骨は、骨端部分だけではなく、脛骨粗面部分にも存在します。
脛骨近位端の骨端軟骨の成長過程は、骨端核(一次性骨化核)の出現にはじまり、やがて脛骨粗面にも骨化核(こつかかく)と呼ばれる成長軟骨の骨形成に重要な中心核が出現します。この脛骨粗面の骨化核出現過程は人により様々で、一般的には脛骨粗面に単独の骨化核(二次性骨化核)が出現しますが、時にこの骨化核が複数個出現するケースや、単独の骨化核ではなく、骨端核の前端下部がくちばしのように伸びて、骨端核と一体的な脛骨粗面の骨化核を形成する場合があります。尚、脛骨粗面の単独の骨化核も、やがて骨端核と結合して一体化します。さらに成長が進むと、後方部分から骨端線が閉鎖(成長過程が終了して、残った骨端軟骨が骨化して完全な骨に変わる状態)し、前方の脛骨粗面から骨端に至る部分の骨端線が閉鎖するのが最後になります。
■ 原因
原因は、陸上競技(主に幅跳びや高飛び)、体操など跳躍動作を行うスポーツで発生します。この跳躍動作の際に大腿四頭筋の急激な収縮力とハムストリングの急激な収縮力の相反する牽引力が脛骨粗面に伝わり、強度的に脆弱な成長軟骨部分で引き剥がされるように骨折を生じます。また、陸上の幅跳びなどでは、着地の際に尻餅を着くようにして身体が後方へ転倒し、なおかつ脚部が膝で折り曲げられたような状態となった場合に、膝関節が強く急激に屈曲され、膝蓋腱の緊張・牽引により裂離骨折を生じます。
■ 症状
脛骨粗面部の腫脹や疼痛、骨折部に一致した限局性圧痛、骨折の程度によっては骨片の異常可動性や脛骨粗面の突出などが見られます。また、膝関節は軽度屈曲位にて伸展も屈曲もできなくなります(他動的な伸展はできますが、自力での伸展ができなくなります)。
尚、裂離した骨折片が上方へ反転転位した場合や、骨折線が脛骨近位関節面に達し、転位を有する場合は、健側(骨折してない側の脚)と比較して、膝蓋骨が高位(上方に偏位した状態)に位置しています。
X線検査などの画像検査により、確定診断されますが、骨折片の転位が無い軽度の損傷では、画像検査でもオスグット病との判別が難しい場合もあります。
■ 病態
骨折の状態(病態)により、Watoson-Jonesの分類法に当てはめて、治療方法の選択がされます。
Type1(Watoson-Jonesの分類1型)
脛骨粗面の二次性骨化核に起こる骨折タイプ。
二次性骨化核を横断するように骨折し、膝蓋腱と共にその骨化核が脛骨近位骨端軟骨本体から裂離骨折を生じた状態。
このタイプは二次性骨化核が複数出現している場合に起こりやすく、その場合は図のように二次性骨化核の間で骨折を生じます。また、転位が大きい場合は、反転転位した状態で完全に剥離し、上方へ転位することもあります。
Type2(Watoson-Jonesの分類2型)
一次性骨化核と二次性骨化核の間で骨折を生じたタイプ。脛骨粗面部で裂離が起こり、骨折部分がめくり上がるような状態となっているが、その基部で骨端軟骨本体と連続性が保たれているもの。
このタイプは独立した二次性骨化核が存在する場合に起こりやすい骨折で、一次性骨化核と二次性骨化核との境界部で骨折が起こります。
Type3(Watoson-Jonesの分類3型)
強力な外力により起こるタイプで、裂離された骨折線が関節端にまで及んでいる状態。
このタイプは、骨端線の後方部分が閉鎖しているものに多く、強度的に弱い脛骨粗面の骨端線から引き剥がされるように骨折線が上行し、脛骨近位関節端にまで骨折線が到達しています。
■ 治療
治療は骨片転位が軽度、もしくは上記病態のType1のように骨片が小さく、膝の自動伸展が可能な状態であれば保存的に整復、固定が行われます。一方、Type2や3のように骨片が大きいものや、骨片転位が著しい場合は、手術による整復固定となります。
予後は比較的良好ですが、転位が大きく骨癒合に安定性が得られにくい場合は、脛骨粗面や脛骨近位関節面変形を生じることもあります。また、TypeVで変形治癒に至ると、膝蓋骨高位の状態が残ります。
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