本文へスキップ

日本独自に伝承される柔道整復の専門家による情報ページ

お問い合わせ先TEL.045-574-0401

〒230-0077 神奈川県横浜市鶴見区東寺尾1-39-3 ラ・フォーレモンテ1階店舗

成長期の野球肘(リトルリーガーズエルボー)child medicine page No.13

※営利を目的とした、当サイト内の画像等の無断使用は禁止です。
尚、当サイトの画像等をご利用の際には、必ず「秋元接骨院HPより転用」と明示してください。
※当サイト内の挿絵では、組織や部位を識別できるように色分けをしていますが、実物の色とは異なります。
Copyright © 2012 秋元接骨院 秋元 英俊

成長期の肘の特長と野球肘の概要

野球肘もしくはリトルリーガーズエルボーと呼ばれる本症は肘関節に起こるスポーツ障害で、特に小・中学生の野球選手に多く見られるために野球肘、あるいはリトルリーガーズエルボーと呼ばれています。しかし、この障害は野球選手ばかりに起こる分けでは無く、肘の使い方が野球の投球動作と似た動作をするスポーツであれば起こりうるもので、ハンドボール、やり投げ、バレーボールなどでも見られます。その他では体操や重量挙げ、ゴルフ、テニス、バトミントン、ボクシングなど、肘の外反、内反、屈伸を反復し、重量や加速力が加わるスポーツであれば同様の障害を発症することがあります。また成長期だけでは無く、成人でも野球肘は見られます。

成長期の野球肘と成人の野球肘は、その本態が異なります。成人の野球肘は、主に靱帯の炎症と靭帯付着部の剥離骨折が起こります。一方、成長期に起こる野球肘(いわゆるリトルリーガーズエルボー)は、肘の成長軟骨に起こる骨端症や骨端線離開あるいは離断性骨軟骨炎で、この時期特有の病態を生じます。
次に示す4枚のレントゲン写真を見比べてみると、完成された成人の骨と成長期の骨の構造の違いが分かると思います。イラスト略図は左肘の骨格を成人と成長期で比較したものです。このように、関節を構成する骨端は、完成された骨よりも強度的に弱い成長軟骨で形成されています。従って、成長期の野球肘は、この時期特有の骨端症を生じます。
この野球肘は発症部位により肘の内側に痛みが起こる内側型、肘の外側に痛みが出る外側型、および、肘の後ろ側に痛みが出る後側型の3つに分けられます。

5歳児と成人の肘関節X線画像比較

4歳児の右肘側面X線画像
成人の右肘側面X線画像

成人の肘関節正面略図
成長期の肘関節正面略図

野球肘の発生メカニズムの概要として簡単に説明すると、投球動作の始めからボールを離すリリースまでのいわゆる加速期は肘が60〜90度ぐらいに屈曲かつ外反しています。この時に内側の靭帯(内側側副靭帯)と前腕屈筋に強い張力が掛かります。また、上腕骨と橈骨の間(腕橈関節)には圧迫力が作用します。この内側靭帯と前腕屈筋の張力により内側上顆へ引きはがすような力が作用するため、内側上顆骨端線離開が最も多く見られます。また、腕橈関節に作用する圧迫力により起こる上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎が内側上顆骨端線離開に次いで多く起こります。
続いてボールを離すリリースの直前からリリース後に至る過程で肘関節は勢い良く伸展していきます。この時に肘の後面で尺骨の肘頭に上腕三頭筋による張力や肘頭と上腕骨の肘頭窩の衝突を繰り返すことによる肘頭の離断性骨軟骨炎や疲労骨折を生じることがあります。


内側型の野球肘:上腕骨内側上顆骨端線離開

成長期の内側型の野球肘では、上腕骨内側上顆の成長軟骨に起こる骨端症(骨端炎)もしくは骨端線離開を生じます。この病態は、成長軟骨の疲労骨折、もしくは剥離骨折とも言えます。

原因

主に投球動作時に、肘の外反強制と前腕屈筋群の緊張、および内側側副靱帯の緊張による物理的ストレスが内側上顆骨端線に作用します。このストレスが過剰に繰り返されることにより、内側上顆骨端線が徐々に損壊していきます。 外傷性の骨端線離開との違いは、外傷性が急激で強力な一度の外力で損傷するのに対して、スポーツ障害として起こる本症は、一度の外力は骨折を生じるほどのものでなくても長期間(または長時間)繰り返し外力が加わることで、初めは炎症を起こし、次第に骨端軟骨に微細な損傷(ひび割れ)が起こり、最終的に骨端線離開(すなわち軟骨の骨折)に至ります。
尚、投球動作に類似した動きをするバトミントン、テニス、ハンドボール、やり投げなどの選手にも当該障害が見られます。バトミントンなどのラケットスポーツはフォアハンドやオーバーハンドで打つ時、ハンドボールなど投げる競技はオーバーハンドやスリークォーター、あるいはサイドから投げる時に肘の外反強制を生じます。

上腕骨内側上顆骨端線離開略図

症状

 投球動作時の疼痛と内側上顆周囲の腫脹
初めは投球動作のときの痛みだけですが、徐々に痛みは悪化し、安静時でも痛むようになります。また、内側上顆を中心に腫脹が観察されます。

 肘関節の可動域制限
肘関節の伸展、屈曲共に制限されることが多く、肘が真っ直ぐに伸びなくなり、深く曲げることもできなくなります。一般的に肘関節の可動域は0〜140度ぐらいで、他動的に動かした場合でも0〜160度ぐらいになります。しかし、内側上顆に炎症が起こると15〜120度ぐらいの範囲でしか動かせなくなるケースが多く見られます。

 肘の外反強制および前腕屈筋群の負荷で疼痛を誘発
他動的に肘を外反すると痛みが強くなり、骨端線の離開や内側側副靱帯の損傷があると健側と比較して外反への動きが大きくなる外反動揺性が見られます。
また、他動的に肘を伸ばすと完全伸展位に近づく辺りで抵抗感を触知して肘の内側に痛みを誘発します。さらに手首を手の甲へ曲げる(手関節背屈)動作を加えると、より強い痛みを訴えます。その他に、おもりなどで抵抗を加え、手関節の掌屈をさせても疼痛を誘発できます。

上腕骨内側上顆の位置を示す画像
上腕骨内側上顆の位置を示す画像2

 内側上顆の限局性圧痛
検者の手指で患者の内側上顆を圧迫すると、その部分に限局した痛みを触知できます。また、離解した骨端軟骨が遊離していると、内側上顆の異常可動性や軋轢音(あつれきおん)を触知することもあります。

 X線像
レントゲンでは判断しにくい場合もありますが、症状が進むと成長軟骨の離開や肥大などが観察されます。

治療と予後

安静が基本となります。従って、投球動作および患部の肘に負荷がかかる事を禁止し、三角巾で固定します。軟骨の離断により転位のある場合は、整形外科にて手術による固定(鋼線や金属性の固定用ネジなどで止める)を行います。
3週から4週経過後より、自動運動によるリハビリを行います。
骨端線の修復が完成されるまでは、数ヶ月を要します。従って、整形外科にてレントゲンなどの画像検査により、定期的な経過観察を行い、その期間中はリハビリに専念し、投球などの動作は中止します。損傷した骨端線の修復完成後よりキャッチボールが許可され、完全復帰までは早くても6ヶ月、場合によっては1年以上要することもあります。


外側型の野球肘:上腕骨小頭離断性骨軟骨炎

肘関節の外側を構成する腕橈関節(わんとうかんせつ)で、上腕骨小頭(じょうわんこつしょうとう)の骨端軟骨に起こる障害です。
投球動作の際に肘関節には強い外反力が作用します。この外反動作のときに腕橈関節を形成する上腕骨小頭と橈骨頭窩が衝突・圧迫を生じます。この反復動作により上腕骨小頭の骨端軟骨が部分的に離断し、場合によってはその離断した軟骨が動いて、関節内に嵌入することがあります。この状態を離断性骨軟骨炎といいます。
離断性骨軟骨炎は、早期に適切な対応を行わないと、重篤な変形性関節症を生ずることになります。

上腕骨小頭の位置を示す画像

※ 腕橈関節:肘関節の内、上腕骨小頭と橈骨頭が関節する部分を腕橈関節 (わんとうかんせつ)といいます。ちなみに上腕骨滑車と尺骨滑車切痕が関節する部分は腕尺関節(わんしゃくかんせつ)といいます。どちらも肘関節を構成していますが、腕尺関節は肘の屈伸運動のみを行うのに対して、腕橈関節は屈伸運動に加え、車軸運動(橈骨がその長軸を中心に軸回旋する)を行い、前腕の回旋運動(回内、回外)を担っています。


原因

主に野球の投球で起こり、野球肘の外側型ともいわれています。また、右投げの男子に多いといわれています。 投球動作の際に起こる肘の外反により、上腕骨小頭と橈骨頭が衝突と圧迫を繰り返すことで上腕骨小頭の関節軟骨が損壊し、微細なひび割れが起こります。その結果、骨・軟骨細胞が死滅して組織の変性を起こすため、やがて損壊した病巣は、周囲の骨・成長軟骨や関節軟骨と分離・離断します。
この障害の原因として、内側側副靱帯や内側上顆骨端線離開により肘関節の外反方向への動揺性を生じたことによる二次的損傷であるもの。または、肘の生理的外反が少ないか、上腕骨顆上骨折、もしくは上腕骨外顆骨折後の内反肘変形の影響(アライメント異常)による直接的損傷であるもの。あるいは変化球の投球などによる肘の捻りの動作による投球動作そのものに由来する直接的損傷であるものなどが発生原因として挙げられます。

上腕骨小頭骨端線離開発生幾序

上腕骨小頭離断性骨軟骨炎略図1
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎略図2

症状

初めは、投球動作時の疼痛だけを訴えますが、無症状で進行する場合もあります。従って、わずかな違和感や痛みを訴えたら、早めに整形外科の検査を受けることが大切です。

 肘関節外側の圧痛及び運動時痛
肘関節外側に圧痛を触知し、投球時の痛みなどを訴えます。また、病状が進行すると日常の肘の曲げ伸ばしでも痛みを訴えるようになります。
遊離した軟骨片が関節包内の滑膜を刺激するため、滲出液の貯留(いわゆる水が溜まった状態)を起こすこともあります。

外側型野球肘の圧痛点

 肘関節可動域の減少と嵌頓症状
初めは痛みのために肘関節の可動域が狭くなりますが、病状が進行すると関節の変形などにより、構造的に可動域の減少(動く範囲が狭くなる)が起こります。
遊離した軟骨片が関節内に嵌入することにより、関節のロッキングや脱臼感あるいは異物が挟まった感覚の違和感などの嵌頓(かんとん)症状があらわれます。

 X線像
上腕骨小頭に軟骨の離断した像がみられます。また、 腕橈関節を中心に描出する撮影方法により、上腕骨小頭が本来の丸みを失い、扁平化している状態が観察されます。
病状の進行により離断した軟骨の転位、あるいは上腕骨小頭と関節する橈骨頭の変形(きのこ状変形)が観察されます。

治療と予後

運動を中止し、肘関節を安静固定とします。遊離した軟骨片が存在する場合は、整形外科にて手術による除去を行います。遊離体を除去しないと関節が変形し、元の正常な状態に戻らなくなってしまいます。また、既に変形を生じている場合はその症状は残存します。
運動の完全復帰までは、状態によりますが少なくても6ヶ月以上を要します。また、関節の変形を生じている場合は、発症前の状態に戻ることはできません。
上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎において肝心なのは、早期発見と適切な期間の安静・保存療法です。したがって、わずかでも発症の疑いがあれば、直ちに整形外科などの専門家の検査を受けてください。


後側型の野球肘:肘頭骨端症・肘頭骨端線離開

肘頭とは、肘の後面の骨の出っ張りのことで、前腕の尺骨の近位端に位置します。この肘頭は、成長期では成長軟骨で構成されています。この成長軟骨部分で起こる障害を肘頭骨端症もしくは肘頭骨端線離開といいます。
肘頭骨端線離開も成長期に起こる野球肘のひとつとして分類されていますが、その他の競技でも肘関節の過剰な伸展を繰り返す動作を行う場合、発症するリスクがあります。
肘頭骨端症(骨端炎)は、上腕三頭筋の付着部やその近傍で炎症が起こっている状態です。一方の肘頭骨端線離開では、骨端核と骨本体との境界部の骨端線に障害が起こります。この骨端線離開では、肘頭が本体より離開して、骨端線のいわゆる剥離骨折の状態となり、骨癒合が成されないまま肘頭骨端線癒合不全に至る場合があります。

肘頭の位置を示す画像
12〜13歳の肘関節骨格略図

原因

肘頭骨端症および骨端線離開は、肘関節伸展動作の過剰な繰り返しにより発生します。肘頭には上腕三頭筋という強い筋肉が付着しているため、肘を伸ばす動作(肘関節伸展)の際に、この上腕三頭筋の牽引力による負荷が肘頭に作用し肘頭の骨端症が発生します。さらに肘の最大伸展時には、肘頭は上腕骨の肘頭窩 という上腕骨のくぼみでロックされて、それ以上の伸展は不可能となりますが、勢いがついているとその反動が肘頭骨端線に作用します。この反復する物理的ストレスが過剰に繰り返されると、肘頭骨端線の損壊が徐々に起こります。
野球では遠投の練習や過剰な全力投球の繰り返しで起こることがあります。その他、ウエイトリフティング、弓道、テニス、体操などでの症例報告もあるようです。

肘頭骨端症・骨端炎略図
肘頭骨端線離開略図

症状

肘頭骨端症は骨端炎の状態で、肘頭の骨端線部分炎症を起こします。従って肘頭の疼痛、腫脹などの炎症症状が観察されます。一方、肘頭骨端線離開では、もちろん骨端症と同様に疼痛や腫れが見られることもありますが、中にはハッキリとした症状が現れないまま骨端線が閉鎖してしまう場合もあります。このようなケースでは、肘頭の骨端線が離断したまま修復されず、偽関節状態に陥ることもあります。従って、成長期にスポーツ時の肘頭の痛みを訴えた場合は、その痛みが僅かであっても詳細な画像検査と経過観察により、慎重に取り扱うべきと考えます。

 投球動作時の肘頭の疼痛と肘頭の限局性圧痛・腫脹
初めは投球動作の時だけ肘頭に痛みを訴えますが、障害が進行すると日常動作でも痛みを訴えるようになります。
圧痛は骨端線離開の場合、肘頭骨端線に限局して触知します。一方、骨端症(骨端炎)では、肘頭の上腕三頭筋付着部及び三頭筋腱に圧痛を触知しますが、骨端線離開と違って圧痛点は限局性ではなく、その周囲に広がって触知します。腫脹は、肘頭を中心に出現し、症状の悪化とともに腫れもひどくなります。

肘頭骨端症の圧痛点
肘頭骨端線離開の圧痛点

 肘関節可動域の減少
初期はあまり見られませんが、病状が進行すると肘をしっかり曲げることも伸ばすことも痛みのためにできなくなります。

 X線像
骨端症(骨端炎)では、不明瞭でレントゲンでは判断しにくい場合もありますが、炎症が進むと骨膜反応像や骨硬化像などの炎症反応像がみられます。骨端線離開では、成長軟骨の離開・転位や肥大などがみられます。

※ 骨膜反応像 periosteal reaction image
骨膜は骨の外周を覆う線維性の膜組織ですが、レントゲン画像では通常描出されない組織です。しかし、外傷や炎症などで骨膜に骨新生が起こるとレントゲンに描出されるようになります。骨膜反応を生じた場合、骨表面に付加されたような物質が白く(明るく)描出されます。

※ 骨硬化像 sclerosing lesion of the bone image
骨折部分をX線で撮影すると、2週間経過後ぐらいから両骨折端の間に仮骨形成が進むため薄く白い物が写ります。この仮骨が次第に骨に変わって行くたびに白さが増して明るく濃くなっていきます。また骨折部分が近傍の非骨折部分よりも太く膨れ上がっているように見えます。この様な骨折の癒合過程において、X線画像で観察される造骨過程の状態を骨硬化といいます。骨硬化像が見られるのは、骨折による癒合過程でのみならず、骨髄炎や骨膜炎などの炎症、骨形成性腫瘍や癌の骨転位などでも特徴的な骨硬化像が見られます。一方で、骨壊死、骨萎縮、骨粗鬆症など、骨が脆く、あるいは骨の成分が少なくなっていき、X線画像で暗く薄くなっていく状態を骨吸収像といいます。骨端線離開や骨折の癒合遅延では、その断端に骨吸収像が見られます。


8歳児の肘頭骨端線離開X線画像略図

治療と予後

肘関節に伸展ストレスのかかる運動を全て中止し、三角巾などで安静固定を指示します。
単純な骨端炎では、疼痛などの炎症症状が治まれば完全復帰できます。ただし、骨端炎を起こした原因となる過度の運動を避け、練習方法の変更を指導します。また運動時の姿勢・フォームに問題がある場合はその矯正も着手する必要があります。
骨端線離開では、離開部分の癒合を確認するまで患部の安静を指示し、離開部分の癒合促進のため低周波や超音波などの刺激を行います。ただし、離開した骨片転位の程度が大きい場合や、転位が小さくても1ヶ月以上の経過 を経ても癒合が進まない場合は、偽関節を起こす恐れがあるため、整形外科の手術による固定となります。その方法は成人の肘頭骨折と同じになります。


<骨折の基本情報・成人の骨折>


<子どもの肩周囲の骨折>


<子どもの肘周囲の骨折>


<子どもの前腕の骨折>


<子どもの膝周囲の骨折>


<子どものすねや足の骨折>


<脱臼>


<捻挫>


<打撲・挫傷>


<スポーツ外傷・障害>


<成長期のスポーツ障害・骨端症>


<その他の筋・骨・関節の障害>


<秋元接骨院テーピング講座>


<秋元接骨院リハビリ講座>

Akimoto judotherapy秋元接骨院

〒230-0077
神奈川県横浜市鶴見区東寺尾1-39-3
ラ・フォーレモンテ1階店舗
市営バス38系統・41系統
バス停宝蔵院前下車すぐ前
TEL 045-574-0401
健康保険・労災取扱・交通事故対応

人工筋肉ソルボセイン