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脛骨骨幹部疲労骨折は反復する負荷により脛骨にひび(不全骨折)を生ずるもので、発症初期はレントゲンでは確認できない程度の損傷の場合があり、症状が進行するまで見逃されることがあります。
スポーツ障害としての脛骨骨幹部疲労骨折は発生原因により特徴があり、ランニングの繰り返しによる疾走型と、ジャンプの繰り返しによる跳躍型に分けて考えられています。
脛骨の疾走型疲労骨折
野球、サッカー、ラグビー、陸上競技などで見られますが、どの競技でも原因はランニングにより発生します。発生部位は、脛骨上1/3と下1/3に多いといわれています。
脛骨は一般的に後方に弯曲した形状をしているため、ランニング時に後面の最も圧縮力が働いた部分に疲労骨折が起こりやすくなります。 これは走る際、地面を蹴るときに生ずる下からの突き上げと、体重負荷による上からの重力で、骨を長軸方向に押し潰す力が働くためです。また下腿三頭筋の張力による弯曲を強める作用も加わり、圧迫力と張力の相互作用で骨をさらに弯曲させる力が強まります。このような物理的負荷の反復により繰り返し圧縮されて疲労骨折を生じるものです。
痛みは下腿後面から内側に起こり、圧痛は骨折部に限局しています。下1/3に疾走型の疲労骨折が起こると、発症初期は脛骨内側後縁に起こるスポーツ障害のシンスプリントと混同されやすいですが、シンスプリントでは圧痛の範囲が上下に広く存在し、疲労骨折では骨折部に限局していることでおおよその区別がつきます。レントゲンでは、発生初期に明確な骨折像や骨膜反応が写らないことも多く、後日(多くは1ヶ月から2ヶ月目ぐらいより)明確な特有反応(骨硬化像、骨皮質の肥厚、仮骨など)が出現します。従って、早期診断のために骨シンチグラフィーといわれる検査が行われる場合もあります。
脛骨の跳躍型疲労骨折
この骨折は主に脛骨の中央前面に発生する疲労骨折で、跳躍を繰り返す運動、例えばバスケットボールやバレーボール、器械体操、クラシックバレー、陸上の跳躍競技などで見られます。
この跳躍型の場合も脛骨の後方弯曲が原因しているのですが、疾走型がその弯曲による脛骨後面の圧縮作用によるものでしたが、跳躍型では脛骨骨幹部にさらに強度の弯曲を起こすために、跳躍の繰り返しにより脛骨後面の圧迫力に加えて、脛骨前面に上下方向の牽引力が強く働き、折り曲げるような状態になります。そのために、脛骨前面には引き裂かれるような骨折像を生じます。また、疾走型よりも完全骨折になりやすく、骨癒合が進まない遷延化に至りやすい傾向があります。
跳躍型骨折の多くは、下腿前面の疼痛と脛骨骨折部の限局性圧痛を触知し、次第に同部分を中心に腫れが顕著になります。症状の進行とともに歩行時の痛みも増悪し、就寝時の夜間痛を訴える場合もあります。レントゲン検査では、初期は骨折部がやや膨隆した骨膜反応像や骨硬化像画像を観察しますが、経過と共に骨折部分がくちばし状を呈する特徴的な骨改変層が見られます。
疲労骨折は、急激な運動量の増加や、長時間の反復動作などにより発生します。しかし、同じ体格や運動能力であっても疲労骨折を起こす人と起こさない人がいます。また、骨折を生ずる位置にも特徴的な傾向があります。それらは以下のように、脛骨の形状特性や筋肉の影響、下肢アライメントの特長などの要因が影響していると考えられています。
脛骨はその上部(近位端)で内顆と外顆の張り出しと前方凸のカーブがある部分、上中1/3部の前方凸弯曲部分、中下1/3部の前方凸から後方凸への弯曲移行部分と外側捻じれ(外捻)部分のそれぞれが力学的弱点とされ、骨折の好発部位と一致しています。
ジャンプやランニングなどでハムストリングなどの大腿屈筋群の脛骨付着部、及び下腿の長趾屈筋、ヒラメ筋、後脛骨筋などの起始部は、脛骨上端部後面に有り、その大腿屈筋群と下腿屈筋群が付着する境界部分は筋肉の張力による骨へのストレスが大きく影響を及ぼします。特にこの脛骨上端後内側部分は疾走型疲労骨折の好発部位と一致します。
下肢アライメントのバランスが悪いと力学的に弱点となる場合があります。脛骨骨幹部疲労骨折の原因となりやすいアライメント異常には、内反膝や下腿内反によるいわゆるO脚、外反膝や下腿外反によるいわゆるX脚、あるいは外反足(回外足)や偏平足、内反足(回内足)、もしくは下腿内旋や下腿外旋が挙げられます。
■ 運動方法の問題
アスファルトなどの固い路面でトレーニングをすることが多い、傾斜や凹凸の多い路面での練習が多い、基礎トレーニング不足やウォーミングアップ不足、誤ったトレーニング方法、偏った練習方法、練習量の急激な増加などが挙げられます。
■ 靴の問題
靴のサイズや形状などフィッティングの問題や、衝撃吸収力不足などが挙げられます。
■ 体質や生活環境の問題
タンパク質やカルシウムの摂取不足など骨密度に係る栄養素の不足、内分泌疾患・代謝性疾患・先天性疾患などの影響で骨質や筋肉の強度などに問題があるものなどが挙げられます。
診断は整形外科の診察により行われます。
脛骨骨幹部疲労骨折の一般的な症状は、脛骨骨幹部に限局した圧痛、硬結の触知、患部の腫脹、場合によっては発赤や熱感を示すこともあります。また、つま先立ちや階段・坂道の下りでの疼痛誘発なども見られます。
その他に、つま先立ちや徒手による足底からの軸圧、あるいはホップテストなどにより介達痛を誘発する場合は骨折を疑います。
※ ホップテスト hop test
患肢で片足立ちになりジャンプをします。脛骨に疼痛を誘発すれば陽性となります。
単純X線検査では、発症初期においては変化が見られないことが多いのですが、経過と共に骨膜反応像、骨硬化像、あるいは明瞭な骨折線の出現や帯状硬化像などが観察されるようになります。従って、徒手検査で疑いがある場合は、X線検査で反応が無くても3〜4週ごとに撮影をして経過観察が行われます。
単純X線検査以外では、MRI、骨シンチグラフィー、運動器エコー検査などを用いて診断の確定材料とする他、治療方針の策定やリハビリ、練習復帰時期、練習方法の選定などの判断の検討材料として用いられます。
※ 骨膜反応像 periosteal reaction image
骨膜は骨の外周を覆う線維性の膜組織ですが、レントゲン画像では通常描出されない組織です。しかし、外傷や炎症などで骨膜に骨新生が起こるとレントゲンに描出されるようになります。骨膜反応を生じた場合、骨表面に付加されたような物質が白く(明るく)描出されます。
※ 骨硬化像 sclerosing lesion of the bone image
骨折部分をX線で撮影すると、2週間経過後ぐらいから両骨折端の間に仮骨形成が進むため薄く白い物が写ります。この仮骨が次第に骨に変わって行くたびに白さが増して明るく濃くなっていきます。また骨折部分が近傍の非骨折部分よりも太く膨れ上がっているように見えます。この様な骨折の癒合過程において、X線画像で観察される造骨過程の状態を骨硬化といいます。
骨硬化像が見られるのは、骨折による癒合過程でのみならず、骨髄炎や骨膜炎などの炎症、骨形成性腫瘍や癌の骨転位などでも特徴的な骨硬化像が見られます。
一方で、骨壊死、骨萎縮、骨粗鬆症など、骨が脆くあるいは骨の成分が少なくなっていき、X線画像で暗く薄くなっていく状態を骨吸収像といいます。遷延治癒(骨折部の癒合遅延)では骨折端に骨吸収像が見られます。
※ 帯状硬化像
X線などの画像検査において、疲労骨折の骨折線が骨を横断していたり、あるいはそれに近い広い範囲で骨損傷を生じていると、白く明るく映る濃度の濃い骨硬化像がその骨折線や骨損傷部分に沿って帯状に広がっている様子が観察されます。この帯状に映し出された骨硬化像を帯状硬化像といいます。
治療は患部の安静が原則です。また、患部の損傷程度や損傷位置、疾走型か跳躍型かによって対処が異なってくるので以下に病態別の治療と予後の概要を述べます。
脛骨上部及び脛骨下部の疾走型疲労骨折
荷重歩行にほとんど支障が無く、その他の日常動作でもそれほど強い痛みが起こらない程度の症状で、さらに単純X線検査ではほとんど疲労骨折の反応が出ないか、あっても僅かな反応程度の軽症では、脛骨に負荷の掛かる運動を中止して患部の安静を確保するだけで十分です。一方、荷重歩行時の疼痛が著しく跛行が見られる場合は、その程度によりサポーター、包帯副子固定、ギプス固定の何れかを施行し、松葉杖などによる患肢の免荷を指示します。
安静期間の目安は2〜3ヶ月で、日常動作に全く症状が出現せず、ホップテストや片足立ちテストなどでも疼痛の誘発が無いことが目安となります。また、スポーツへの完全復帰となるとさらに1〜3ヶ月を要し、その期間中に患肢の衰えた運動能力の回復に重点を置いたトレーニングメニューを行ってもらいます。
脚部の筋力回復には、骨の負担が少なく効果的に脚部の筋力回復ができるという理由でニーベントウォーク(膝曲げ歩行)が勧められています。
医師の指示する安静期間をしっかり守り、回復訓練期間もきちんと設けれは予後は比較的良好です。再発を繰り返すケースは、医師の指導を無視して早期復帰した場合などに多く見られます。また、医療機関に掛からず無理をして悪化させた場合は、手術を要することになったり、回復期間に長期を要したりなど、選手生命に係ることになりかねないので、症状を感じたら早めに医師の診察を受けて、医師やトレーナーの指導を遵守することが結果的に回復の近道となることを心得ておくべきと考えます。
※ ニーベントウォーク(膝曲げ歩行:knee bended walking)
ニーベントウォークは脚部の筋肉を回復するために考えられた運動法のひとつです。
筋肉回復のためにジョギングやランニングなどを行うと地面からの衝撃など、骨や軟骨に掛かる負担のために再発の心配やトレーニングが勧められないなどの不安があるようです。しかし、この運動法ならば少なくとも地面からの衝撃の不安は解消でき、効果的に脚部の筋力を回復することができます。
以下にニーベントウォークの手順とポイントを示します。
● 左右の歩幅を肩幅程度に広げて真っすぐ立った状態から、膝と股関節を80〜90度程度まで曲げ、スクワットをしているような姿勢をします。
● 両腕は肘を伸ばしたまま前方へ90度挙上した位置とし、前方へゆっくりと歩いていきます。歩くときは踵から着いて足全体で踏みしめ、最後はつま先で押し離すように足を運びます。
● この運動の注意点として、足先と膝の先端は前方へまっすぐ向けること(決して外向きや内向きにならないように注意)、背筋を伸ばし目線は真っすぐ前方へ向けて上半身や膝、股関節の肢位を保持したまま進むことが大切になります。身体が上下や前後に大きく動くような動作をすると効果がありません。重心を一定に保ったまま歩くことがポイントです。
● 歩く歩数は10〜20歩を1セットとして5セット程度は行うようにしてください。膝や股関節を90度近くに曲げるのが辛い場合は70度程度でも構いません。また、ニーベントウォークと普通のウォーキングを交互に織り交ぜた方法も効果があります。
脛骨中央部の跳躍型疲労骨折
このタイプの骨折は、X線検査で明瞭な骨膨隆や骨折線の存在などを示す比較的重症なケースが多くなります。また症状が軽度であっても疾走型と比較して安静期間や運動復帰まで日数を要することになります。
この跳躍型疲労骨折は、骨の新生が乏しく骨折部の癒合がなかなか進まないことで知られています。
安静期間は症例により幅があり、整形外科の報告例では4ヶ月〜1年6ヶ月となっています。また、運動復帰にはさらに期間を要するので、できる限り早期復帰を望む場合は、手術による治療が勧められます。
保存療法は、患部の安静確保と超音波や低周波を用いた物理療法による骨癒合促進が中心になります。尚、4ヶ月の安静で疼痛の消失やX線上の癒合が大分良好な状態になった例は50%前後と言われています。従って、4ヶ月〜6ヶ月程度で確実に運動復帰したい場合は手術療法を選択するのが賢明と言えます。
手術療法は、以前は骨移植+プレート固定や、ドリリングなどが行われていましたが、現在では髄内釘を用いた手術の方が復帰が早く再発も少ないとのことで主流になっています。
手術の場合は、ほとんどの例で、3〜4ヶ月で徐々に練習を始めることができるようになっています。
練習を再開する場合は、ニーベントウォークなどを取り入れて脚部の筋力回復を重点に、まずは競技に参加できる体造りから始めてください。いきなり元通りの練習をするのは再発を起こすばかりではなく、患部を庇って他の部位の損傷を招くこともあるので注意してください。
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