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この疾患は、幼小児期に起こる大腿骨頭核の阻血性壊死(そけつせいえし)を起こすもので、本来はスポーツ障害や外傷に含まれるものではありませんが、この疾患が存在する場合、スポーツをきっかけに痛みなどの症状が発現したり、股関節の変形が進行することがあるのでここに掲載しました。
大腿骨の骨頭は10歳頃まで、そのほとんどが成長軟骨で構成されています。また、その中心に骨の成長の核となる骨頭核が存在しますが、およそ4歳から7歳頃までの時期は、その骨頭核を栄養する血管が外側骨端動脈の1本しか無いため、何らかの原因でその血流が阻害されると約2週ほどで骨頭核が壊死を起こしてしまいます。その状態がペルテス病です。
壊死を生じても残存する僅かな血流や、他の血管の介入などにより自己修復が起こりますが、修復されるまでに2〜3年を要するとされています。
修復が完了するまでの間は力学的に非常に脆弱なため、運動や荷重などによる耐久力以上の負荷が加わることで大腿骨頭が変形を起こしてしまいます。従って、ペルテス病の発病は、その6割以上が4歳〜7歳の間に起こっていますが、ペルテス病を発病していることに気付かず、本格的にスポーツをはじめる10歳以降に初めて明確な症状が出現し、ペルテス病に罹患していることが発覚する場合があります。
腰部や骨盤・股関節・大腿部の痛み、跛行など脚を引きずる動作、周囲筋肉の萎縮、これらの症状が外傷や過剰運動などの外力による原因が全く無く発症した場合は本症を疑います。また、軽度の外力を誘因に発症することもあるので注意してください。その他に股関節の開脚時の痛みや股関節の内旋外旋運動による疼痛の誘発、安静時も痛みを訴えるなどの症状が見られます。また、変形が進行すると股関節の他動的な外転および内旋の制限が見られます。その他に放散痛として膝の痛みを生ずることがあり、膝の痛みを訴えて病院を訪れる場合もあります。
X線検査では、骨頭の壊死や変形などが観察されますが、発症初期では不明瞭で後日再検査により発見されることも少なくありません。
これらの症状を踏まえ、原因不明の股関節周辺の痛みを子供が訴えたら本症を疑い、速やかに整形外科などの専門医院や病院を受診するべきです。
股関節の痛みを発する疾患には様々な炎症性疾患があり、ペルテス病以外でも早急な処置を要するものもあります。従って、股関節周囲の痛みを訴える場合は、速やかに整形外科を受診することが大切です。
類似した症状を示すものには以下の疾患があります。
滑液胞炎(かつえきほうえん)
股関節周囲には、関節を通過する筋肉や腱の滑動性を助ける器官として、滑液包が存在します。この滑液包は文字通り、潤滑性を高める滑液を含む袋状の組織です。過剰な運動によりこの滑液包が炎症を起こす場合が運動による非感染性の滑液包炎で、感染性疾患などにより、菌などの感染源が滑液包に侵入して起こす炎症が感染性滑液包炎です。
化膿性股関節炎(かのうせいこかんせつえん)
挫傷や挫創などでの感染や泌尿器からの感染、あるいは扁桃腺などから血行を介して 股関節に菌が侵入し、化膿性炎症を発症する疾患。
治療は、整形外科などの専門病院で行われます。
治療方法は、主に装具療法となります。これは、大腿骨頭になるべく負荷をかけないようにするためで、変形の進行を予防する目的があります。
ペルテス病は、初期(炎症期)-壊死期-再生期-修復期を経て修復されて行きますが、この再骨化期が終了する時期までの3〜4年程度は装具による保護を続けることになります。また、血流を獲得する手術や、変形が進行した大腿骨の矯正手術などを行う場合もあります。
ペルテス病の予後などを判定するために、カテラルの分類で評価されます。
group1:壊死の範囲が骨端核前方の一部である。
group2:壊死の範囲が骨端核前方1/2を占める。
group3:壊死の範囲が骨端核の2/3以上を占める。
group4:壊死の範囲が骨端核全体を占める。
(注)group2以上で骨頭の圧潰が起こりやすくなり、壊死の範囲が広がるほどその程度も重度となります。
初期
骨端核の壊死が始まって1ヶ月以内。炎症症状がみられ、関節の腫脹や関節液の貯留が起こります。X線検査では、あまり変化がみられません。
壊死期
骨端核の壊死がX線上でも明らかな状態となる時期。壊死が始まってから1年以内にはX線上でも壊死が描出されます。壊死を起こすと骨端軟骨の厚みが増すため、X線上では関節間隙が拡大して見えます。また、壊死の範囲が骨端核の1/2を超える範囲に生ずると、骨頭の圧潰が起こりやすくなります。この骨頭の圧潰で骨端核が扁平化し前外側へ偏位(外側亜脱臼:lateral subluxation)します。
再生期
骨端軟骨の壊死層が吸収され、新生骨で置換される時期で、壊死発症から2〜3年頃にみられます。再生の過程の時期のため、構造的に力学的な耐久力に劣り、骨頭の圧潰が起こりやすい状態です。この時期が過ぎるまでは、患部に耐久力を超える負荷をかけないように、固定などによる安静確保が重要となります。
修復期
骨新生が進み修復が完了する時期です。発症から3〜4年経過で修復に達するといわれています。
大腿骨頭や股関節の変形を完全に防ぐことは不可能です。従って、程度の違いはありますが必ず後遺症として股関節変形による何らかの障害が残存します。また、治療が遅れたり、治療を受けないまま放置され 、骨端核の外側偏位を生じた場合は、股関節の変形も相当進行することがほとんどで 、日常生活にも支障を生じます。その場合は、変形を修正する手術などを行う必要があります。
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