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足関節捻挫は、捻挫の中でも最も頻度の高いもので、スポーツ外傷として、あるいは日常の生活動作の中でのケガとして比較的多く遭遇します。 このページでは足関節の構造を理解した上で、単純な足関節捻挫に留まらず、足首を捻ったときに起こる足部の外傷まで範囲を広げて紹介していきます。
足首の関節を一般的に足関節(そくかんせつ)といいます。この足関節は、下腿の骨である腓骨(ひこつ)と脛骨(けいこつ)及び足の骨の距骨(きょこつ)の3つの骨で構成されています。従って、解剖学では足関節のことを距腿関節(きょたいかんせつ)といいます。
距腿関節は、腓骨と脛骨が合わさり、ほぞ穴のような関節窩(かんせつか)を形成し、距骨滑車(きょこつかっしゃ)と呼ばれる距骨の関節頭(かんせつとう)が、そのほぞ穴状の関節窩 (かんせつか)にピタリと収まるように関節しています。この距骨滑車の両側面下部には腓骨の外果 (がいか)と脛骨の内果(ないか)と呼ばれるいわゆる「くるぶし」の骨に対応する関節面が側方へ突出しており、それぞれ外果面、内果面といいます。
この距腿関節は、その関節の形状から分かるように、足首の曲げ伸ばし、即ち足関節の背屈と底屈の動作が主な運動です。つまり足関節の内返しや外返しといった動作はほとんどできません。ただし、距骨滑車の上面は長軸方向(解剖学的には矢状方向)にやや陥凹しており、側方へローリングするように回転する外転・内転という動きが可能となっています。しかし、外転に際し腓骨の外果が距骨の外果面に接触し、また内転に際しては脛骨の内果が距骨の内果面に接触するため、この外転・内転運動は極めてわずかな動きしかできません。
一方、脛骨内果と距骨内果関節面、腓骨外果と距骨外果関節面を対比してみると、内果は前後方向に長く、上下方向では短い構造をしており、外果は前後に短く、内果よりも1cm程度下方へ長い構造をしています。また外果は内果よりもやや後方へ位置しています。これによる若干の傾斜により底屈運動の際にわずかな内返し動作が起こり、逆に背屈運動の際にはわずかな外返し運動が起こります。ただし、実際に足関節で起こる内返しや外返しの可動域から見ると極めてわずかな動きといえます。
この内返し、外返し運動の主たる関節は距腿関節の下部にある距骨下関節(きょこつかかんせつ)によるものとなります。
距腿関節の直下には、距骨と踵骨(しょうこつ)の間で関節する距骨下関節があります。距骨下関節は、距骨の下面と踵骨の上面で関節しています。またその関節面は、前距踵関節(ぜんきょしょうかんせつ)、中距踵関節(ちゅうきょしょうかんせつ)、後距踵関節(こうきょしょうかんせつ)の3つに分かれて構成されています。
この様に一見複雑な関節を構成していますが、それぞれの関節のかみ合わせは浅くできており、比較的自由度のある運動が可能となっています。
距骨下関節の運動を大雑把に例えると上下四方にローリング運動をすることです。即ち上面でみると足の先端を左右へ振るように回転し(図:距骨下関節の運動1)、側面では踵骨の先端が上下するように前後へローリング(図:距骨下関節の運動2-A及びB)、前後面でも踵骨が左右へローリングする動き(図:距骨下関節の運動3)があります。しかし、これらの運動はそれぞれ個別に動くのではなく、その動作の組み合わせにより足関節の内返しや外返し、あるいは足関節の内反、外反運動を可能にしています。
足関節は関節包(かんせつほう)という線維性の組織で覆われています。関節包は関節の運動が円滑に行えるように機能する組織で、関節軟骨の代謝やヒアルロン酸などの分泌などの作用もあります。関節包よりも表層には、足関節を前後左右にしっかり支える複数の靱帯があります。
主に距腿関節の内側を支える靱帯
距腿関節の内側を支える主な靱帯は浅層と深層に分かれています。浅層は脛骨内果から前下方へ舟状骨内側を連結する脛舟部(けいしゅうぶ)と 、脛骨内果下端と踵骨の載距突起(さいきょとっき)を連結する脛踵部(けいしょうぶ)からなり、その後方には深層の後脛距部靱帯が見えています。深層は前方の前脛距部(ぜんけいきょぶ)と後方の後脛距部(こうけいきょぶ)からなり、脛骨内果と距骨内側を連結しています。この内側の靱帯は、脛骨付着部より踵骨に向かって扇状に広がり三角形状に見えるため、三角靱帯と呼ばれます。これら距腿関節の内側を支える靱帯は非常に強固に構成されているため、歩行中に軽く捻ったぐらいではほとんど損傷することは無く、スポーツや事故などによる強い外力の作用を生じたときに起こります。
主に距腿関節の外側を支える靱帯
距腿関節の外側を支える主な靱帯は、前方から前距腓(ぜんきょひ)靱帯、踵腓(しょうひ)靱帯、後距腓(こうきょひ)靱帯で構成されています。
前距腓靱帯は腓骨外果の前縁から前下方へ走行し距骨頚部の外側面に付着します。後距腓靱帯は外果の内側面後方からほぼ水平に距骨後突起内側結節に付着しています。踵腓靱帯は外顆下端から後下方へ斜走して踵骨外側面に付着します。
距腿関節の前方と後方を支える靱帯
距腿関節の上方で脛骨と腓骨の下部を連結する靱帯があります。前方にあるのは前脛腓靱帯(ぜんけいひじんたい)といい、前方で腓骨外果の上部と脛骨下端外側を連結しています。また後方にあるのは後脛腓靱帯(こうけいひじんたい)といい、後方で腓骨外果上部と脛骨下端外側を連結しています。
脛骨と腓骨は距骨滑車を内外側から挟み込むように位置しており、この靱帯によりその脛腓間をしっかり連結しています。もしもこの靱帯を損傷し脛腓間の連結が緩むと、距骨の円滑な運動が損なわれて、距骨滑車が脛骨や腓骨の関節面との過剰な摩擦を生ずるようになり、関節軟骨の剥離や変形を生ずる原因となることがあります。
距骨下関節を支える主な靱帯
距骨下関節の内側には、前方から底側踵舟靱帯(ていそくしょうしゅうじんたい)、内側距踵靱帯(ないそくきょしょうじんたい)があります。底側踵舟靱帯は踵骨の載距突起と舟状骨の内側下部を連結する靱帯で、内側距踵靱帯は載距突起と距骨後突起内側結節を連結する靱帯です。後方では、距骨後突起外側結節と踵骨を連結する後距踵靱帯(こうきょしょうじんたい)があります。
外側には、距腿関節の項目で解説した踵腓靱帯の直ぐ下に平行するように外側距踵靱帯(がいそくきょしょうじんたい:距骨と踵骨を結ぶ靱帯)が存在し、さらにその前方で骨間距踵靱帯(こっかんきょしょうじんたい)と頚靱帯(けいじんたい)が距骨と踵骨の外側の連結を補強しています。また、距骨下関節の靱帯ではありませんが、この骨 間距踵靱帯よりも前方で踵骨と舟状骨・立方骨を連結するY字状をした二分靱帯(にぶんじんたい)があります。Y靱帯とも呼ばれるこの二分靱帯も、足関節捻挫により損傷を起すことがあります。
足関節は見かけ上、背屈(はいくつ)、底屈(ていくつ)、内返し、外返しの4つの動きがあります。背屈は足の先を上に向ける方向へ足首を曲げる動作のことで、底屈は足の先を下に向ける方向へ足首を伸ばす動作のことです。また、内返しは足裏を内側に向ける動作で、回外ともいわれます。一方、外返しは足裏を外側へ向ける動作で、回内ともいわれます。
足関節の運動は構造概略の項で述べた通り、距腿関節と距骨下関節の共同作業により成り立っています。足関節の基本動作について距腿関節と距骨下関節の係わりを含めて解説します。
足関節の背屈・底屈
足関節の背屈と底屈は距腿関節により動作します。
距腿関節はその運動軸が一つで、基本的に背屈と底屈(すなわち足首の曲げ伸ばし)の動作のみ行うことができる関節です。その可動域(運動範囲)は、下腿骨軸に対して垂直のライン(垂線、計測時は軸心を足底面、もしくは足底面と並行する線、移動軸は第5中足骨、もしくは第5中足骨と並行する線)を0度とし、背屈が0〜20度、底屈が0〜45度が正常可動範囲となります。(日本整形外科学会:日本リハビリテーション医学会制定)
尚、整形外科医や解剖学者執筆の書籍で背屈のことを伸展、底屈のことを屈曲と記載している場合があります。これは、その執筆した先生の足関節運動の定義により、背屈が下腿の伸筋により動作するので伸展としており、一方の底屈が下腿の屈筋により動作するので屈曲としているためです。また、一部の先生の書籍や論文では、背屈のことを屈曲、底屈のことを伸展としている場合もあります。こちらは、背屈=足首を曲げる、底屈=足首(つま先)を伸ばすといった、一般的日常概念に合わせたものと思われます。何れにしても、現在では日本整形外科学会などで混乱を防ぐために、背屈と底屈で統一するように制定されています。
足関節の内返し・外返し
足底面(足の裏)を内側に向ける動作を内返し、逆に外側に向ける動作を外返しといいます。
内返しは回外、内転、底屈の3つの運動が合成された動きです。一方の外返しは回内、外転、背屈の3つの運動が合成された動きとなります。この動作の主軸となるのは距踵関節で、距腿関節とその他の足根骨間関節が補助的に作用します。
足関節捻挫は、発生機転、及び病態によりそれぞれ分類されています。
発生幾転による分類
発生機転の観点では、主に足関節の内反強制により起こる内返し捻挫と外反強制により起こる外返し捻挫に分けられますが、そのほとんどが足関節の内反強制(内返し)により起こります。
内返し捻挫は内反捻挫(ないはんねんざ)ともいい、主に足関節の外側靱帯を損傷します。また、外返し捻挫は外反捻挫(がいはんねんざ)ともいい、主に足関節の内側靱帯を損傷します。
病態による分類
病態の観点では、足関節を構成する組織の損傷箇所や程度により、1度、2度、3度と分類されています。これは整形外科医が固定方法や手術方法の判断の目安としています。
以下に例として足関節内反捻挫における分類を紹介します。
※ 足関節内反捻挫(内返し捻挫)における組織損傷の程度による分類
1度(軽度損傷)
足関節の外果前縁の圧痛と、歩行や関節運動に際して若干の荷重歩行痛はあるものの、日常生活に著しい支障を来すほどの痛みはほとんど無いか、あっても軽い状態です。腫脹、皮下出血は外果の前方部分を中心に出現しているが比較的軽度です。また、足関節の可動に際し、内返しで疼痛を誘発しますが、その他の動作ではほとんど障害がありません。
エコー検査において、外側靭帯に若干の損傷を見る程度で、X線検査では異常無く、関節の不安定性もほとんど生じません。以上の様な症状を示すのは前距腓靭帯の単独損傷で、関節包や他の組織の損傷を伴わないものと言えます。
私の臨床経験では、上記の様な前距腓靭帯の単独損傷他、ほとんど腫れが無く、皮下出血も伴わない前脛腓靭帯の単独損傷や二分靭帯の単独損傷を観察したことがあります。前距腓靭帯の軽度損傷では足関節を外側方向へ真横に内返しするように捻る捻挫で見られ、二分靭帯の軽度損傷はヒールの高い靴で内返し捻りを起こしたときに、足関節の前方の踵骨と立法骨間のショパール関節に外力が作用した場合に見られます。これらの場合も多少の痛みはあるものの歩行が可能で、サポーターやテーピングを施行すれば運動が可能な程度です。
尚、前距腓靭帯の損傷では外果前面に圧痛があり、前脛腓靭帯の損傷では外果前面と内顆前面の間に圧痛があります。
また、二分靭帯損傷では踵骨前方突起近傍に圧痛があります。この患部に限局した圧痛の有無と腫れや皮下出血の有無で判定します。
2度(中程度損傷)
足関節が著しく腫れて、皮下出血が出現します。歩行や関節運動に際して強い痛みを伴い、運動や歩行が困難な状態です。自動的・他動的に関節を動かすことが可能ですが非常に痛みを伴います。エコー検査では外側靭帯や関節包に顕著な損傷が観察され、X線検査では、前方引き出しや内返しによるストレス撮影で軽度〜中程度の外側不安定性を観察します。
外観からは外果を中心に足関節が腫れて、皮下出血は外果下部や前面、あるいは中足背面や踵(かかと)に広がって観察されます。関節運動の観察をすると内返し強制が最も苦痛で、腫れが著しい場合は背屈も疼痛と共に強い抵抗が有って曲げられません。荷重歩行も困難で、体重が患部に掛からないように患肢のカカトを持ち上げて庇う動作が見られます。また、中程度以上の足関節捻挫では、外側靭帯損傷に加えて、二分靭帯・骨間距踵靭帯・頚靭帯などの足根骨間の靭帯損傷を伴うことも多く、案外見逃されて足根洞症候群などの後遺症を生ずることもあります。
3度(重度損傷)
足関節が著しく腫れて変形し、歩行や関節運動は、ほとんど不能。自動的・他動的に関節を動かすことも痛みのために非常に困難。また、他動的な関節運動に際し正常では有り得ない異常可動性がみられることもあります(外側靱帯の完全断裂、足関節の亜脱臼、腓骨外果の剥離骨折、内側靱帯断裂、腓骨下端部骨折、脛骨内果骨折などの単独あるいは複合損傷による変形や異常可動性)。
足関節の内反ストレステストや前方引き出しテストでは、徒手検査でも明らかな距骨の異常可動が観察されます。
X線検査による観察が必須で、特に成長期の骨端線離開や高齢者の骨折は足関節捻挫により起こる頻度が高く、整復や固定処置などが正しく行われても、後遺症として足関節の変形性関節症を生ずるので、その後の経過にも注意深い観察が必要です。
※ 私の施術活動において、視診による単純な診察(足関節の体表観察)では、1度と見られる症状でも、腓骨外果の不全骨折を発症していた症例(下の画像参照)を体験したことがあります。従がって、外観から上記のような分類で安易に判断するのは危険であると思います。 大して腫れていないのに1ヶ月以上経過しても痛みが引かないなどの場合は骨折も疑うべきと考えます。軽い捻挫と思っても、直ちに整形外科など専門家の診察を必ず受けてください。
足関節捻挫で最も頻度の高いのがこの内返し捻挫です。捻挫受傷の原因は段差や階段を踏み外して捻ったり、つまずいて捻るなど日常見られる事故によるもの、あるいは運動中のアクシデントや労働中の事故などにより起こるものなど、様々な場面で見られます。以下に足関節内反捻挫で生ずる病態の種類とその症状を解説します。
足関節外側靱帯損傷
内反捻挫の大半が、この外側靱帯損傷を生じます。
足関節の外側靱帯は、いわゆる足首の外くるぶし(腓骨外果)と距骨及び踵骨を繋ぐ靱帯で、前方から前距腓靱帯、踵腓靱帯、後距腓靱帯で構成されています。これらは、足関節の関節包を補強し、足関節の動きを制御する働きがあります。
軽度の内反捻挫では、前距腓靱帯のわずかな部分損傷であることが多く、腓骨外果前面(外くるぶしの前)辺りに圧痛と腫脹がみられます。
重症になると、前距腓靱帯と踵腓靱帯が断裂し、関節包も損傷します。
前距腓靱帯は関節包と一体となっている靱帯で関節包の内側に密着しています。従って前距腓靱帯の断裂を生ずると関節包の損傷を必ず伴います。この場合は、腓骨外果前方に強い腫れと皮下出血、疼痛による歩行障害、および前距腓靱帯損傷部に一致した圧痛があります。
二分靱帯損傷 と踵骨前方突起裂離骨折
踵骨前方と立方骨を繋ぐ踵立方靱帯、及び踵骨前方と舟状骨を繋ぐ踵舟靱帯を合わせて二分靱帯、あるいはY靱帯と呼ばれています。
この靭帯を損傷すると、足の外くるぶし(外果)の前下方の足の甲の部分に痛みや圧痛(押した痛み)、腫れを生じます。この靱帯は、ヒールが高めの靴を履いたときに内反捻挫を起こしたり、やや前方へ足関節が伸ばされるようにして内反捻挫を起こしたときに損傷します。
尚、二分靱帯の張力により、この靱帯の付着部である踵骨前方突起や舟状骨、立方骨の裂離骨折を起こすことがあります。中でも踵骨前方突起の裂離骨折は比較的多く見られます。痛みや腫れがひどい場合は、この様な骨折を生じていることもあるので、きちんと医師の診察を受けましょう。
頚靱帯・骨間距踵靱帯の損傷
足関節の内反捻挫で前距腓靱帯と関節包の損傷を伴う2度(中程度)以上の捻挫に合併することが多い損傷です。
また、二分靭帯損傷や踵骨前方突起骨折、あるいは第5中足骨骨折に伴って起こることもあります。
頚靭帯や骨間距踵靭帯部分のみの単独損傷は比較的少ないですが、でこぼこした路面や砂利道などで足を外側に真横に捻るような状態になった時は、この部分だけ単独で損傷することもあります。
頚靭帯や骨間距踵靭帯の損傷は部分断裂程度の事がほとんどで、完全断裂することは滅多にありません。
症状は、足関節外果の前下部で踵骨前方突起よりもやや後方の踵骨前方と距骨前方の間隙に圧痛を触知し、圧痛点を中心に皮下出血や腫れが出現します。
尚、血腫が距骨下関節の外側にある足根洞(そっこんどう)と呼ばれる部分に溜まり、線維性の瘢痕組織を形成すると足根洞症候群に至り、慢性痛や習慣性捻挫の原因となることもあります。
※ 足根洞症候群
外果下方の距骨と踵骨により形成される空間を足根洞といいます。この足根洞には、足の姿勢や接地感覚などに関与する固有感覚受容器と呼ばれる感覚神経で形成された組織があります。捻挫や骨折などの外傷で、この足根洞に血腫や瘢痕組織形成が起こると、痛みや足の不安定感を生じます。この病態を足根洞症候群(そっこんどうしょうこうぐん)といいます。
足関節内反捻挫により起こるその他の損傷
足関節を内反強制することにより起こるその他の損傷には、腓骨外果剥離骨折、第4及び第5中足骨基部骨折などの骨傷があります。腓骨外果に限局した圧痛がある場合は腓骨外果剥離骨折を疑います。また第4あるいは第5中足骨基部に限局性圧痛があれば同部の骨折を疑います。何れも整形外科のレントゲン検査により、診断は容易です。
また、スキーやローラースケートなどで坂道の登り方向に足先を向けた姿勢や、しゃがんだ姿勢のときに、足関節背屈位で内反捻挫を起こすと前脛腓靱帯の単独損傷を起こすことがあります。
一方、内反尖足位で捻挫を起こした場合に距骨後突起や後距踵靭帯を損傷することがあり、踵の後方でアキレス腱と踵骨が接続する辺りで、アキレス腱よりも奥にある骨の突起に痛みを訴えます(距骨後突起障害)。内反捻挫で、この辺りに痛みを訴えることが案外多く見られるので注意が必要です。
その他では、舟状骨内側に外脛骨(がいけいこつ)という過剰骨を有する足の場合、内反捻挫の際にこの外脛骨と脛骨内果が衝突し、外脛骨の損傷(有痛性外脛骨)を起こすことがあります。
※ 距骨後突起障害(きょこつこうとっきしょうがい)
サッカーやラグビーなどボールを蹴るスポーツに多く見られる障害ですが、足関節内反捻挫をきっかけに発症することがあります。
※ 有痛性外脛骨(ゆうつうせいがいけいこつ)
舟状骨の内側に過剰骨という骨の突出部がある場合、その過剰骨のことを外脛骨(がいけいこつ)といいます。この部分に何らかの原因で炎症や疼痛が起こることを有痛性外脛骨あるいは外脛骨障害といいます。
有痛性外脛骨の多くは、ランニングやジャンプの繰り返しにより後脛骨筋(こうけいこつきん)が疲労を起し、足の縦アーチが下がって踵骨の外反(距骨下関節の外反)を生じたときに、後脛骨筋の腱と外脛骨の間に緊張が起こり疼痛を生じます。また、足の内反捻挫の際に外脛骨と脛骨内果の衝突、あるいは足の外反捻挫の際の後脛骨筋腱の緊張などをきっかけに発症することがあります。
内反捻挫の治療と予後
靱帯損傷がほとんど無く、皮下出血や腫れも無いような軽い捻挫では、アイシングや冷湿布、あるいはテーピング固定やサポーター固定で充分です。ほぼ1週間程度で治ります。
前距腓靱帯の単独損傷では、腓骨外果の前面に皮下出血や腫れが限局して出現します。しかし、痛みはあるものの歩行も可能で一般的に比較的症状は軽い状態です。2週〜3週の包帯副子固定でほぼ治ります。
前距腓靱帯損傷に関節包の著しい損傷を伴う場合は、皮下出血や腫脹が激しく、歩行も困難になります。また踵腓靱帯や前脛腓靱帯の損傷を伴う場合もあります。この様なケースでは4週〜6週の包帯副子固定、もしくはギプス固定を施行します。また、固定除去後にリハビリを要することもあります。治癒まで2ヶ月以上かかることが多く、また後遺症で半年〜一年ぐらい立ち上がるときの痛みや動かし始めの痛みが残存することもあります。
固定などの保存療法で経過観察後、足関節の不安定性が残存する場合、スポーツ活動や労働復帰のために整形外科で手術を要することもあります。
二分靱帯損傷や骨間距踵靱帯損傷は、一般的に3週前後の包帯副子固定により治ります。固定をしっかり施行することで予後も良好です。しかし見逃されることが多く、固定をしないで放置すると 足根洞症候群などを起して痛みが長期化するケースがあります。この様なケースでは整形外科による鎮痛剤の投与や注射による治療が施行されます。また、接骨院では 整形外科の管理下で電気治療や、テーピングあるいはサポーターによる軽い固定を施行し、痛みが消失するまで施術を行います。
踵骨前方突起骨折などがある場合は、整形外科にて骨折部が癒合するまでギプス固定を施行します。固定期間は4〜6週です。また裂離した骨片の癒合が遅延している場合は、骨片が小さければ摘出手術を行い、骨片が大きい場合は螺子などを用いた内固定(手術的に固定する)を行います。予後は比較的良好です。
足関節の外返し捻挫は、不整な路面(でこぼこ道や砂利道)での捻挫や、足関節の外反変形、あるいは外反偏平足などの足の形態的・機能的異常を有する場合に起こりやすいといえます。また、しゃがんだ姿勢での作業やローラースケート、スケートボードなど、膝を曲げて体を屈む体勢を取るスポーツでの足首の捻挫、もしくはラグビーやサッカーなどで、足関節の外側から他者の足や体が乗って足の外反を強制された場合に、重度の捻挫や骨折を伴う重傷を生ずることもあります。
前脛腓靱帯損傷(ぜんけいひじんたいそんしょう)
足関節の内返し捻挫の項でも述べましたが、外返し捻挫でも前脛腓靱帯損傷が起こります。特に外反捻挫では足関節背屈位で起すことが多いため、内反捻挫よりも前脛腓靱帯損傷を起こす確率は高いといえます。
足関節は背屈するほど脛骨と腓骨の間が開き、それに伴い脛腓靱帯の緊張が強くなります。従って足関節背屈位で外反強制が起こると前脛腓靱帯の損傷を起こします。
距腿関節は脛骨と腓骨の間に距骨が嵌まるような構造をしています。捻挫を起こすとこの距骨が傾いて、脛骨と腓骨を引き剥がすように脛腓間を広げてしまいます。特にスキーやローラースケートなどで坂道の登り方向へ足先を向けているときや、しゃがんだ姿勢でいるときに足関節を捻挫すると、脛腓靱帯の緊張が高まった状態でさらに脛腓間を開く外力が働くために、脛腓靱帯を損傷してしまいます。
前脛腓靱帯損傷の単独損傷では、テーピングや包帯・副子固定などで3週間程度の固定をすることで回復します。
骨折や脱臼を伴うものでは、 整形外科による治療を要します。治療は徒手整復とギプス固定で、固定期間は約4週が基準です。
転位のある骨折や脱臼で徒手整復困難な場合は手術的に整復・固定処置が施行されます。 固定はスクリューやティビアボルトなどの金属により骨を直接固定(内固定)し、ギプスによる外固定が併用されます。固定期間は約6週施行されます。また固定除去後は、足関節の運動療法と荷重歩行訓練を2週〜3週行い、全荷重歩行ができるようになるまで、受傷から2ヶ月以上を要します。
足関節内側靱帯損傷(三角靱帯損傷)
足関節の内くるぶしに、外観的に三角形状をした靱帯群がありこれを三角靱帯と呼んでいます。この靱帯は4本の靱帯で構成され、非常に強力な靱帯です。そのため強い外反強制などの外力を受けた場合や特殊な条件下で足の外返しを生じた場合に起こり、脛骨や腓骨、距骨などの骨折を合併する例が多くを占めます。また骨折を伴わない場合でも脛腓靱帯損傷を合併し、脛骨下端と腓骨下端の間が開大して距骨滑車の脱臼や亜脱臼を起こすことがあります。
単純な捻挫の場合は足の外返しで起こります。一般的に足の外返しは起こりにくいのですが、坂道の上りやスキー、ローラースケート、スケートボードなどでしゃがむ姿勢など、足関節の背屈肢位の状態にある特殊な条件の下で外返し捻挫を起こします。
三角靭帯損傷では、靱帯断裂による距腿関節の脱臼や、腓骨下端骨折あるいは脛骨内果の骨折との合併がほとんどのため治療は整形外科で行われます。接骨院で治療を行う場合は、整形外科の管理下で後療を行います。
治療は徒手整復により整復可能であれば保存療法(手術をしない治療)となります。徒手整復が困難な場合は手術的に靱帯の縫合や脱臼、あるいは骨折の整復・プレート固定などを施行します。
ギプスの固定期間は約4週で、その後は着脱可能な装具やサポーターによる固定が8〜12週程度施行されます。また、この期間中に運動療法や歩行訓練などのリハビリが平行して施行されます。尚、プレート固定などの内固定では、6か月以上経過後にプレート除去手術が施行されます。
予後は合併した骨折の状態によります。一般的には予後良好ですが、骨折部分が変形治癒などを起すと、二次的な関節変形などを生じて、運動や労働が困難になるケースもあります。
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